産後うつ体験談③~病院の選び方と治療法~

産後うつ体験談②からの続きです。

前回は産後うつの症状について書きました。

今回は【病院の選び方】とそれぞれで行った【治療法】について、経過と共にご紹介します。

といっても、当時はまだ自分が産後うつだという自覚はなかったので、夫からどんなに勧められても病院に行くことに抵抗がありました。

その辺りの葛藤も含めて、参考にして頂ければ幸いです。

また、当時私が処方されていた内服薬のうち、ネットで購入できるものも一部載せています。

私と同じように病院に行くことに抵抗がある方は、まず市販の漢方薬から試してみるのもおすすめです。

目次

産後うつの治療が受けられる病院の種類

内科に併設された心療内科病院

まず初めに訪れた病院は、いつも家族でお世話になっている近所の内科でした。

普段は内科ですが、曜日・時間を限定して心療内科としても診察していることを知り、『ここなら先生も顔見知りだし、心療内科にかかっていることもバレにくいから、良いかな…。』というのもあって、ようやく病院に行く決心が付きました。

ドクターは女性で心療内科専門医の資格がありました。

当時の心境を振り返ると、とても悲しかったことを覚えています。

というのも、私はずっと、精神科の作業療法士を目指して勉強してきました。

大学の臨床実習中、精神科の患者さん達が回復するにつれ、元々どれほど心優しい人達であったのかを目の当たりにし、『あぁ、こんなに優しい人達ばかりなのに、なぜ日本の社会は精神障害者を差別するのだろう』と強く疑問に感じたことを覚えています。

にも関わらず、自分自身がいざ当事者になるかもしれないと考えると、恥ずかしくてたまりませんでした。

心療内科にかかっているということを、周囲の人に知られたくなかったのです。

少なからず、自分の中にも精神障害者に対する偏見があることを知り、悲しい気持ちで初めての心療内科にかかりました。

既に先生が顔見知りだったので一見話しやすいかと思いましたが、普段の私と息子の様子を知っていることと、優しすぎるがゆえに、なぜか本当の自分を知られたくないと話すことを躊躇してしまい、結局本当のこと=自殺念慮があることまで打ち明けられませんでした。

なので、先生は私の症状をそれほど重く受け止めず、「初めての子育てで、ちょっと気持ちが張り詰めちゃったのちゃったのかな?」と言いながら、イライラを落ち着かせる漢方薬を処方してくれただけでした。

もちろん、当時の私にはあまり効果はありませんでしたが、少し眠れるようにはなりました。

当時飲んでいた漢方薬はこれです。

通院は一度きりでやめてしまいました。

女性総合クリニック

次に夫が見つけてきたのが、電車で数駅離れた繁華街にある女性専用のクリニックでした。

ここはメンタルクリニックというよりも、月経不順や不妊症、更年期障害など女性特有の疾患全般を扱っています。

ドクターは女性で婦人科専門医の資格を持っていました。

ここの先生は一つ目の病院の先生とは対照的で、患者さん(=私)と適度な距離を保ちつつ、淡々と冷静に物事を話す先生でした。

ただ、この頃には自殺未遂もあったため、さすがに自分自身でも『いつか子供を虐待してしまうかもしれない…』と危機感を抱いており、全てを打ち明けました。

ここで初めて【産後うつ】と診断されました。

そして、先生から定期的なサポーターが必要と判断され、住んでいる区の保健師にも連絡が行きました。

治療は1週間に1度の通院、抗うつ薬と漢方薬の内服、保健師による電話や家庭訪問でした。

当時はイライラよりも不安感が強かったため、その両方を静める漢方薬を処方されました。

数ヵ月通い、何度か薬の種類を変えたり、3錠まで量を増やしましたが、一向に回復する気配がなく、ある時先生からこう言われました。

「あなたは自分自身の出産に対して、どんなイメージがありますか?何か重大なマイナスのイメージがあって、それを乗り越えられていないんじゃないかしら。」

確かに、思い当たる節はいくつかありました。

私が妊娠したのは、ハワイ挙式に向けて準備を進めていた時でした。日程も決まり、ウェディングドレスも購入し、打ち合わせも残すところ後1回というタイミングで。

結局出産後に結婚式を延期しましたが、その当時はとても悲しかったことを覚えています。

そして、不謹慎にも手放しで妊娠を喜べなかった自分自身を『最低な母親だ』と、ずっと責め続けていました。

また、私達夫婦は女の子を強く希望していましたが、妊娠初期から男の子と分かり、しばらくその事実を受け入れられませんでした。

この時も『なんて最低な母親だ』と自分を責めたことを思い出しました。

今となれば、妊娠できただけで、健康に生まれてきてくれただけで感謝しかないと分かりますが、産後うつ真っ只中の私には、そう思う心の余裕はとてもありませんでした。

先生にこの事実を打ち明けると、心理士による個別カウンセリングを勧められました。

よく考えてみれば、この先生は婦人科専門医であって、心療内科医でも精神科医でもないのです。

そのカウンセリング代が1時間5000円と私自身が納得できる金額ではなく、金づるにされているような気がして(被害妄想が酷かったので)先生への信頼を失い、それを機に通うのを辞めてしまいました。

精神科クリニック

最後に通ったのは、家の真裏にある小さな精神科クリニックでした。

実はこの病院の存在はずっと知っていましたが、駅に向かう人通りの多い場所にあり、丸見えの出入り口にも堂々と【こころのクリニック】と書かれていたので、上述の通り周囲の人に知られたくなかった私は、通うことを躊躇していました。

が、2つ目のクリニックが家から離れていたため、子連れで通うしんどさも痛感していました。

『やっぱり近い方が楽だよな…』と、意を決して門を叩きました。

ここのドクターも女性で精神科専門医の資格がありました。

初めて会った時からタメ口であっけらかんと話すその姿は、まるで知り合いのおばちゃんのよう。これまで出会ってきたドクターとのあまりの違いに、あっけに取られました。

『こんな適当そうな先生に、本当のことを打ち明けて大丈夫だろうか…』と不安がよぎりましたが、すぐにその不安はなくなりました。

というのも、初回カウンセリングの時に

「全然関係のないところから話を聞くけど、できる範囲で答えて~。」と言われ、成育歴、家族構成、学生時代の部活など、今の私のことは一切聞かずにそんなことばかり尋ねました。

ますます増していく、知り合いのおばちゃん感。

ひとしきり私の話を聞いてから、こう言いました。

「ずばり貴方は、感受性が強くて色んな事に人一倍気がつくわね。仕事上は細やかな配慮が出来る人だと高く評価されるけど、プライベートではしんどくなっちゃうタイプね。」

それは、これまでの人生で私が尊敬してきた恩師や上司に言われ続けてきたことと、全く同じ内容でした。

そこから先も、ずけずけと言い当てるおばちゃん先生。有名な占い師かと思うほど、たった一回のカウンセリングで全てを見抜かれました。

私はこの先生を信頼し、通うことにしました。

治療は抗うつ薬の内服だけでしたが、毎度あっけらかんと緊張感なく明るく気さくに話す先生に話を聞いてもらうだけで、少しずつ心が楽になりました。

抗うつ薬の内服量については、まず朝晩1錠ずつの合計2錠から始めました。

夫が不在で不安が強くなった時や、仕事で疲れ果ててイライラした時は、追加で1錠頓服として飲んでいました。

そして、ここでモンテッソーリ教育に出会い、内服量が減っていきます。(詳しくはプロフィールをご覧下さい)

頓服を飲むことがなくなり、朝の薬を飲むことがなくなり、一番疲れが出やすい夕方前の15時に、1錠だけ飲むようになりました。

こうして通院を続けていくうち0.5錠に減り、遂に薬を飲まずに過ごせる日が1ヵ月以上続きました。

そして発症から約8ヵ月後、完治しました。

産後うつの病院選びのポイント

これら3カ所の病院を巡り、私が感じた病院選びのポイントは以下の通りです。

  1. 極力家から近い病院を選ぶ
  2. ドクターの専門を確認する
  3. 少しでも合わないと思えば病院を変える

産後うつという心身ともに疲労困憊の中で、病院に通い続けるというのはとてもしんどい行為です。できるだけ近い方が、子連れや天気が悪い日でも通いやすく、服薬の自己中断が避けられます。

また、ドクターの専門を確認することで、どの分野が得意か分かります。

そして最後に。ドクターショッピングは賛否両論ありますが、人間同士なので相性が合わないと思えば、病院を変えてよいと思います。

信頼関係を築けてこそ、早い回復に繋がります。

とはいえ、通院・投薬・モンテッソーリとの出会いだけで完治した訳ではありません。

これらは24時間365日のうち、生活のごく一部です。

自分自身を立て直すため、家事・仕事・育児のやり方について、夫と話し合いながら、徹底的に見直しました。

次回は、私達夫婦の取り組みについてご紹介します。

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